2006年03月23日

初めて葉山まで行ってみたのだった。

『パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 時代に先駆けた女性画家』神奈川県立近代美術館 葉山
 今年の美術鑑賞は遅れに遅れて、3月のしかも残り1週間というところとなった。これには幾分か公立美術館の独立行政法人化というものが影を落としていることだろう。じゃいかにも大衆受けする企画展ばかりなのか、というとどうもそうでもなさそうだ。個人的な趣味の問題なのか?それに10年をひと括りとしてみるならば、3巡目ということになり、それなりに出かける展覧会のセレクトが出来るようになったことも大きいだろう。例えば『グランマア・モーゼス展』とか『福田繁雄カラクリ展』とか『エリオット・アーウィット写真展』とかは間違っても行かないわけです。あっ最近はそんなのないか…。それにやっぱりコンテンポラリー・アートの本邦初紹介としての役割を担っていたセゾン美術館の欠落は大きい、大きすぎる。バブル崩壊コノヤロー!であります。まっセゾンもそれに乗っかっていたとも言えますが。東京都現代美術館も森美術館もザ・ミュージアム(オイオイ、何様?)もそれほどのことでもなかったし、ワタリウムは我道を往く…。現実はなかなかうまくいきませんです。で、今回初めて神奈川県立近代美術館の葉山館へ行くことにしました。開館から2年半ちょっと、何してたんでしょうか。あれ、『ホルスト・アンテス展』ってなぜ行かなかったのかな。やれやれ。逗子からバスで片道240円。時間的にだいたい20分弱。駅から徒歩ですぐに行ける鎌倉とは雲泥の差です。しかも道幅は狭く、よくこんなとこバスで通るな、といった感じでちょっと怖かったです。途中で葉山マリーナなので、川だか、運河だか知りませんが小型船舶が係留されて雑然とした感じ。自分の中の葉山のイメージ、確実にダウンです。御用邸もあるのになぁ。あっ、そうこうしているうちに見えてきました葉山館。誰の設計でしょうか、無難で匿名な感じ。そして周辺住宅とは明らかに異質です。今、建築設計に対する関心が高まっていますけれど、素人の僕にもひとつ、その建物の利用者として言えることがあります。“設計においてあなたが美学を貫くとき、それは確実に排他的である、誰よりも世俗的であるあなたは、大衆を嫌悪する”ということです。ちょっと言い過ぎました。でもこういったことに頓着のない人を僕は信用しません。もっともその公共施設がもつ排他性を僕も享受しているのかもしれません。それは確実にコード化しているわけだから。しかし、バスから風景を眺めていたんですが、“海のまち”というとなんでどこもかしこも地中海的になるんですかね。おしゃれな食べ物やさんは。イメージの自主拘束的管理?んじゃ、そろそろ本題に入りますよ(笑)。去年から今年にかけての日本におけるドイツ年の一環として行われる『パウラ・モーダーゾーン・ベッカー展』を観る事にする。恥ずかしながら今回初めて知った画家であった。だから同時に期待というものがあった。ドイツ表現主義の先駆者と言った記述があるが、恐らく早世したからで、こういう紹介は彼女の本質を見誤るような気がする。ドイツ国内に点在していた、いくつかの芸術家コロニーで起きていたことは同時多発的であって、彼女がちょっと抜きん出ていただけなのではないだろうか、そしてそれは一にも二にもパリの動向を知っていたからだろう(ただし体系的な思想と技術への配慮はなかったように思われる)。だいたい表現主義という括りも、僕にはなんとも怪しげなもののように思えるのだ。ただ表現が変化していく画家の軌跡を眺めることは嫌いではない。いや、表現者とはすべからく、そういった試行錯誤を繰り返すものだろう。その途上で無念にも亡くなってしまったということだろうか。ポートレートを見ると強い意思を持った女性であることが判る。興味深いのは棲む場所、家族(父親或いは夫)、芸術家グループ、と寄りかかる場所を持たなかったということだ。常に彷徨していたのだ。物理的なことだけでなく、その精神も。これが自立する女性ということなのかどうかは僕には判らないけれど、美しいとは確実に言える。審美眼だけを頼りに切り開いていく自分の世界。その理解者は夫、オットー・モーダーゾーンではなく、リルケであったというのも痛いところである。もっとも(ニーチェの愛人としても有名な)ルー・サロメとの破局を体験して後のリルケとしては、自分の詩のネタだったのかもしれないが。いや、リルケも自分に似た、さまよえる人間に共感していたのかもしれない。ムンクのフォルムに似た作品が数点あった。カタログは2400円。340ページ。B5変。美術出版デザインセンターによるすばらしい美術印刷(作品の写真撮影など)。表紙にエンボス加工あり。しかし、解説はパウラの内面や男たちとの関わり合いなどまでには言及せず禁欲的であり人間味に欠け、いささか不満であった。彼女のエロスにスポットライトを当てたい。最初の本格的な紹介としては上出来だろう。
DSC00307.JPG

さてさて、この後は都内へ、そしてドイツ映画の鑑賞です。こちらです。
posted by きびだんご at 23:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 展覧会感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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